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2011年東北地震の二大プレート境界型余震における地震前・地震時・地震後の断層破壊とスロー地震活動の関係に関する研究

【キーポイント】

久保久彦1西川友章2

1防災科学技術研究所, 2京都大学防災研究所

doi:10.1038/s41598-020-68692-x
Date: 2020-7-22

日本海溝沿いで発生する通常の地震とスロー地震の相互作用に関する理解を深めるために、岩手県沖・茨城県沖で発生したプレート境界型大地震の地震前・地震時・地震後の断層破壊とスロー地震の活動(Nishikawa et al., 2019, Science)の空間的な関係を調べた。それぞれの地域では多くの地震が発生しているが、本研究では特に2011年東北地震の二大プレート境界型余震である、2011年岩手県沖地震(MJMA 7.4、2011-03-11 15:08)と2011年茨城県沖地震(MJMA 7.6、2011-03-11 15:15)に関して着目して解析を行った。

その結果、岩手県沖および茨城県沖で発生したプレート境界型大地震の地震時の破壊領域はスロー地震の活動域とは重なっていなかったことが分かった。また大地震の前震や余震の多くがスロー地震の活動域で発生していることから、地震時に破壊される領域と隣接するスロー地震の活動域で、前震や余震を伴った非地震性すべりが生じているケースがよくあることが示唆された。さらに2011 年岩手沖地震と周辺で過去に発生した二つの M7 級地震(1960年・1989年)は、①同じアスペリティで地震時の断層破壊が生じていた、②多くの余震を伴った余効すべりがスロー地震の活動域で起きていた、という共通の断層破壊特性を持つことが分かった。茨城県沖のプレート境界には海山が沈み込んでいることが分かっているが、その領域と微動の活動域が重なっていることから、この海山が「ソフト」バリアとして働くことで2011年茨城県沖地震の地震時破壊が止まったと考えられる。

通常のプレート境界型地震とスロー地震の空間的な関係が岩手沖・茨城沖で共通するという本研究の結果は、日本海溝沿いで将来発生しうる大地震を今後考えていく上で有用な情報であると考える。

本研究はJSPS科研費JP17K14384およびJP18J01056の助成を受けて進められたものです。

本成果は2020年7月21日に英国科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました:
Kubo, H., and T. Nishikawa (2020) Relationship of preseismic, coseismic, and postseismic fault ruptures of two large interplate aftershocks of the 2011 Tohoku earthquake with slow-earthquake activity, Scientific Reports, 10, 12044. https://doi.org/10.1038/s41598-020-68692-x