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リアルタイム震度の予測手法を新たに開発

【キーポイント】

久保久彦1功刀卓1

1防災科学技術研究所

doi:10.5610/jaee.22.1_36
Date: 2022-2-28

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研究内容

防災分野でよく用いられている震度は静的な地震動指標値であるが、功刀ほか(2008, 2013)に基づいて演算される「リアルタイム震度」は動的な地震動指標である。防災科研の強震モニタでは日本全国の強震観測点における1秒毎のリアルタイム震度を表示しており,地震発生時には地震による揺れが伝わっていく様子を色の変化で確認することができる。本研究は、リアルタイム震度の時系列、特に揺れ始めから最大の揺れに達するまでの立ち上がり部分を簡易的に予測・再現するための手法を提案するものである。

まず立ち上がり部分の特徴的な時間としてP波到達からリアルタイム震度最大値の95%に達するまでの時間DMAX95に着目した。このDMAX95を震源距離やモーメントマグニチュード、震源深さ、30 m平均S波速度、S波速度1400 m/s層の上端深さと紐づけた予測式を、計41地震の強震記録に基づく回帰分析によって作成した。さらに立ち上がり部分の時系列形状を再現するために、P波到達からリアルタイム震度最大値に達するまでの時系列を対数関数で表現した近似関数を考案した。

これら2つを組み合わせることで、任意の地点でのリアルタイム震度の立ち上がり部分を簡易的に予測・再現することが可能となる。この提案手法を実記録で検証したところ、2016年熊本地震本震においておおむね良い予測結果が得られた。ただし断層破壊過程が複雑な巨大地震である2011年東北地方太平洋沖地震の場合には予測の限界も見られた。

本研究で提案する予測手法を、震度の値そのものを予測する既存の地震動予測式と組み合わせることによって、任意の地震におけるリアルタイム震度時系列の簡易的な予測が可能となる。地震動シナリオに基づいて行われる事前の災害訓練などにおいて、より現実的な地震動時系列の情報を簡便に提供していくことに、本研究成果は貢献するものである。またこれまでの緊急地震速報では震度の最大値のみを予測してきたが、揺れの時系列に関する情報(例えば揺れが最大となるまでの猶予時間)を新たに提供することにも本研究はつながると考える。

論文情報

本成果は2022年2月28日に日本地震工学会発行の学術誌「日本地震工学会論文集」に掲載されました:
久保久彦・功刀卓 (2022) リアルタイム震度の立ち上がり部分に関する予測手法の提案, 日本地震工学会論文集, 第22巻, 1, 1_36-1_49. https://doi.org/10.5610/jaee.22.1_36

また同論文を英語化したもの(2022年12月28日に日本地震工学会論文集へ掲載)もありますので、欧文雑誌等で引用するときはこちらをご利用ください:
Kubo, H. and Kunugi T. (2022) Prediction Approach of Rise Part of Real-Time Seismic Intensity, Journal of Japan Association for Earthquake Engineering, 22, 6, 6_22-6_38. https://doi.org/10.5610/jaee.22.6_22


図の説明

2004年中越地震および余震において記録されたリアルタイム震度時系列を、本研究で提案している予測手法で予測した結果。